【連載】かごしまお魚再発見49

お魚再発見

お魚ファイル49 ボラ

ボラ

大富先生(鹿児島大学水産学部)に、鹿児島のお魚のことを教えてもらえるこのコーナー。
今回は、捨てたらもったいない、寒い時季にこそ食べたい魚をご紹介!

からすみだけじゃない とてもおいしい出世魚
 突然ですが、「とどのつまり」の「とど」って何だかご存じですか? あの大きな哺乳類のトドではなく、魚のボラのことですね。ボラは出世魚。大きくなるにつれて「おぼこ→いな→ぼら→とど」と呼び名が変わります。「とどのつまり」は「結局のところ(思わしくない結果)」という意味です。行きつく先が「とど」で、ブリやスズキなど、他の出世魚に比べると味が落ちるという評価からこう言われるようになりました。
 ボラといえば、あの高級珍味、からすみの親ですね。からすみはボラの成熟した卵巣で作られます。ボラの産卵期は秋から冬にかけて。この時季の雌の卵巣はとても高い値段で取り引きされます。てまひまかけて作られた、からすみはおいしいですからね。そのままおつまみとして食べても、からすみパスタなどにしてもいいですね。
 一方で、卵巣を取り除いたあとのボラの身は捨てられます。売れても二束三文です。ブリやスズキとはちがう扱いなんですね。…しかし、私は断言します。寒い時季の寒ボラの身は脂がのって、抜群においしいんです!とろりとした心地よい食感のお刺身は、甘みも抜群です。もちろん、煮ても焼いても揚げても甘みは変わりません。売られているのを見つけたら、即買って食べましょう。魚の味は時季や場所によって変わることを知っていれば、得をしますよ。

ボラ
 日本各地の岸近くの海や川の下流にすんでいる、ボラ目ボラ科の魚。全長1m近くになりますが、よく見られるのは50cmくらいです。正面から見ると、逆三角形の顔をしています。港などから海をながめていると、いかにも不器用そうにくりかえしジャンプしてはそのまま着水している魚を見ることがありませんか? それはおそらくボラです。

はんぎり出し
 鹿児島県霧島市国分の伝統行事に、はんぎり出しがあります。土地を干拓する際に作られた潮だまりで江戸時代に始まった精進落としの行事です。「はんぎり」というのは馬のエサを入れる底の浅い桶のことで、これを取り付けたいかだを竹の棒であやつって移動しながら、投網で魚をとります。
 ねらう魚は「えっな」と呼ばれるボラの幼魚。とれた「えっな」は背ごしにして、みんなで酢みそで食べるんだとか。ぜひ次世代に残してほしい行事です。

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