【連載】内科・心療内科28 – 父親の役割(その1)

CHILD'S SCHOOL

父親の役割(その1)

 最近、育児休暇を取得する父親が少しずつ増え、子育てに積極的に関わるようになってきました。今回から子育てに対する父親の役割について3回シリーズで考えてみましょう。

子どもの不安を和らげ、自立を助ける役割

 父親の役割の第一は、子どもが母親依存にならないための手助けをすることが挙げられます。生後2〜3歳までに親との愛着が形成されますが、3〜4歳になると外の世界に興味がむき、それを探索したい欲求と母親の庇護に頼りたい気持ちの両方で揺れ動きます。母親に頼りたい気持ちを乗り越えるために、父親が子どもの不安を和らげ、安心して踏み出せるように手を引き、押してあげることが必要です。この時期を乗り越えることで安定した自立を獲得することにつながります。もし、この役割を父親が担えないと、子どもは母親に密着したままの状態に留まることになり、それが続くと母親依存から抜け出せず、時に母親への我がままな要求が増え、満たされないと怒ったり癇癪を起こすようになります。母親への密着を和らげるプロセスは、父親が母親と子どもの間に入り、思い通りにならないことであっても受け入れられるように促してあげることが必要です。
 

スキンシップや遊びを通し、子どもに社会の決まりを教える

 第二は、子どもに「ダメ」なものは「ダメ」と言って、社会の決まりや現実の厳しさを教えることが必要です。何でも許されるという万能感に歯止めをかけ、際限のない欲求を諦めさせたり、現実的な妥協ができるように体験を通して身につけさせることが大事になります。過剰な受け入れや甘やかしが行きすぎると、自分をコントロールする力(我慢する力)が育ちません。その結果、社会での適応が妨げられることにつながります。特に男の子の場合、男性としての行動規範やアイデンティティを身に着けるためには、5歳までの父親とのスキンシップや遊び、触れ合いなど身体的接触が必要と言われています。父親からの教えを学び、働く後ろ姿や日々の行動をみて、父親への敬意や同一化が起こり、それが子どもを律する行動規範や基本信条となり、大人になってからも持ち続けていくことになります。その意味では、子どもに見せる父親の後ろ姿は重要であり、そのことをしっかり肝に銘じる必要があります。

子どもの健全な成長のための 父親の重要な役割

 母親と子どもの関係は、10ヶ月にわたる妊娠期間、分娩、その後1年半から2年に及ぶ哺乳といった生物学的な強い結びつきがあり、その間の緊密で愛情深い関わりが愛着を育み、子どもの健全な成長につながることが分かっています。一方、父親と子どもの関係にはそのような生物学的な結びつきはありませんが、父親には子どもが社会適応していくためのスキルや能力を獲得できるようにする重要な役割があります。
 子どもにとって母親は「安全基地」であり、父親はその基地から出ていくための「踏み出す力と道標(みちしるべ)」を与えることになります。

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