【連載】内科・心療内科29 – 父親の役割(その2)

CHILD'S SCHOOL

父親の役割(その2)

 一昔前は、子どもにとって怖いものは地震・雷・火事・親父と言われていましたが、最近は親父が抜け落ちてきた感があります。しかし、子どもの成長と発達には父親の存在は依然として重要です。前回は父親の役割について2つ述べましたが、その続きを考えてみましょう。

子どもに現実の厳しさを教え、挫折から立ち直る力を高める

 3番目に、父親は子どもの自立を促し、ストレスによって受けたショックや心の傷から回復する力(レジリエンスと言います)を高める役割を担っています。父親は、子どもと母親の2者関係から子どもが外に出ていくときの導き手であり、現実の厳しさを教える存在ですが、それが欠けると自分の思うようにいかないストレスにさらされると躓きやすく、社会に上手く適応できなくなります。全面的に自分を受け入れ、守ってくれる存在としかやっていけなくなり、少しでも非難されたり、怒られたりすると傷つき、立ち直れず、適応障害やうつ状態となり社会に出て行くのが難しくなります。最近、心療内科を受診する20〜30代の男性にこのような患者さんが増えてきており、新型うつ病とも言われています。
 

子どもの自己確立のお手本としての役割

 4番目は、子どもが思春期になってからの父親の役割です。思春期は自我を形成し、目標をみつけ、それに向かって進みながら自分を確立していく時期になりますが、男の子の場合、父親の関わりが少ないと身近に手本になる存在が見当たらないため、社会の中で自分をどう確立したらいいか迷うことになります。自己確立ができないまま思春期を過ぎると、自分に自信が持てず、人生に対して否定的になり、向上心が湧かず、投げやりで無気力な状態を生みやすくなります。
 女の子の場合も男の子と同様に父親の存在は重要であることが分かっています。アメリカでの研究によると、仕事と家庭生活で充実した人生を手に入れた女性は、10代の時に父親と特別な信頼関係を持ち、父親が好奇心を刺激してくれ、そして自分で考え判断するように導き、励ましてくれたと答えています。また、自分の能力を信じてくれ、一緒に力を合わせ、汗を流すような活動に積極的だったとも述べています。

子どもの社会適応能力を育む重要な存在

 父親との関わりが多いほど子どもの発達はスムーズにいき、ストレスに耐える力とストレスから回復する力が強くなり、社会適応も順調にいきます。男の子の場合、手本となる父親がいないときは父親代りになる祖父や親族、他の信頼できる人でもよく、それがかなわない時は、「父親がいたらこう言うだろう、こうするだろう、こう望むだろう」と話して聞かせることも子どもの成長、発達に十分な効果を生むでしょう。女の子の場合は、父親の影響が強まるのは10代になってからと言われており、元気で前向き、向上心に富む父親の存在が女の子の成長に好影響を与えることが分かっています。

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